物部川流域の“課題”
今、物部川流域では様々な問題が起きています。社会基盤の整備や生活環境の変化により、物部川との関わりが少なくなってしまった私たち現代人にとって、流域に起きている問題に対する意識が薄れてしまっているのではないでしょうか?
ここでは、物部川流域の課題について大きく4つに分けて見ていきます。
1.シカの食害による源流の森の荒廃と山の崩落
物部川上流域では、林業の衰退やシカの食害などにより、流域面積の多くを占めている森林の荒廃が進み、水源かん養の機能が低下しています。
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さおりが原:原風景(左)とシカ食害後(右)
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森の中の歩道:原風景(左)とシカ食害後(右)
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三嶺のシカ
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林道から谷へと大量の土砂が流出
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上流の川に流出した土砂
2.崩落によるダムへの土砂堆積と貯水能力減少
ダム湖の課題は、豪雨の際に上流からの大量の土砂を溜め、濁水の長期化につながること、また貯水能力も減少し、渇水に陥ること
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永瀬ダムへ土砂が流入する様子
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ダム湖底に溜められた土砂
3.中下流域の濁水・渇水問題
物部川は、平成16 年の集中豪雨で大規模な山腹崩壊が起こり、長期間の濁水に見舞われました。この濁水は天然アユの成長や産卵に大きな打撃を与えただけでなく、多くの水生生物やそれを餌とする生き物の生息に悪影響を及ぼしました。
濁水の原因は主に森林の山腹崩壊が考えられ、濁水の長期化の原因はダムへの微細粒土砂の滞留が挙げられますが、水利用の多い物部川にとってダムは重要な貯水機能を担っており、ダムを存続させた上での濁水問題への取組が求められています。
一方、代掻き時における農業濁水の問題も表面化しています。
また、物部川下流においては、工場や家庭で使用された後の排水も貴重な水源となっています。
環境基準地点において、有機汚濁の代表的な指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)は基準を達成していますが、数値的なものだけで清流と呼ぶには十分と言えない場合もあり、水量が少なくなる時期の物部川は一時的に水質が悪化することがあります。水質の悪化は、アユの餌となる付着藻類の種類や量に影響を及ぼし、このことにより、アユの成育への影響も懸念されています。
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日御子川は清流(左):本流は濁水(右)
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農業濁水~せせらぎ水路:左の本流は澄んでいる
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統合堰の中央の水無し魚道
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瀬切れするほどの渇水の三十代
4.土砂流入による河口閉塞と生態系への悪影響
仔魚などが海で育ち、川に上って育つ両側回遊魚(アユ、ゴリ、アユカケ、モクズガニ、テナガエビ等)にとって、河口は大切な生命線である。なので、閉塞はあってはならないことである。